日本消化器外科学会雑誌
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B型, C型肝炎ウイルスマーカーよりみた肝細胞癌切除症例の臨床病理学的検討
金丸 太一森田 康伊藤 卓資山本 正博
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1998 年 31 巻 3 号 p. 836-841

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抄録

肝細胞癌 (HCC) 切除140例を対象として, 血清中のC型肝炎抗体 (HCV Ab), B型肝炎 (HBV) マーカーを測定し, その発現率について検討した. HCV Ab陽性例は103例 (73.6%) であった. HBV surface抗0原 (HBsAg) 陽性例は23例 (16.4%) であった. HCV Ab陽性例のうち, HBV surface抗体 (HBsAb) 44.7%, HBV envelope抗体 (HBeAb) 陽性46.8%, HBV core抗体 (HBcAb) 陽性75.0%でHBVマーカーの発現は高率であった. HBsAg陽性例ではHCVAb陽性例と比べ若年者に多く, 肝機能は良好で, 発見時の腫瘍径は大きく, 区域切除以上の術式が多く選択されており, 従来の報告と一致した. HCVAb陽性例のうちHBVマーカーの有無でHCC診断時の肝機能や腫瘍の臨床病理像には明らかな差は認めなかったが, HCV Ab陽性例のうちHBcAb陽性例はHBcAb陰性例に比べ有意に再発率は高かった. HCVとHBVの重複感染はまれでなく, 重複感染例ではHCV単独感染例と比較して予後が異なる可能性が示唆された.

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