抄録
凍結融解処理肝組織 (FTHT) を皮下移植・感作することによりある種の肝細胞増殖因子 (HGF) が誘導されるが, その作用をラット30%肝切除後の肝再生能と四塩化炭素肝障害に対する保護作用から推察した. その結果, 1) 肝再生能は30%肝切除にFTHT感作を併用すると, DNA合成能, 細胞増殖能, 肝湿重量は有意の高値を示し高い肝再生能が示唆された. 2) 四塩化炭素による肝障害時にFTHT感作を併用すると肝逸脱酵素の増加が有意に抑制され, 直接的な肝保護作用の存在が示唆された. 3) 血清hepatocyte growth factor値は, 30%肝切除群 (3ng/ml前後) に比べFTHT感作群では14日目に20ng/ml前後と有意の高値を示した. 以上の結果, FTHT前感作は肝切除後の肝再生を有意に促進し, 薬物学的肝障害に対し保護作用を示す可能性が示唆された.