日本消化器外科学会雑誌
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膵頭十二指腸切除術後に発症した血栓性血小板減少性紫斑病の1例
片岡 祐一宮本 英雄高野 容幸豊川 貴司伊藤 徹小沼 博横田 等西村 博行
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1998 年 31 巻 5 号 p. 1122-1125

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抄録
症例は63歳の男性で, 膵頭部腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後52日目に血小板数とヘモグロビン濃度の急激な減少を認めた. その翌日に突然, 痙攣が出現し昏睡状態に陥り, 左片麻痺を認めた. また発熱もみられるようになった. 最初, 脳梗塞と敗血症によるDICの診断で治療を進めていったが改善傾向はなかった. 血小板減少, 破砕赤血球を認める溶血性貧血, 原因不明の中枢神経症状, および発熱より血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) と診断した. 新鮮凍結血漿による血漿交換を行ったところ, 臨床症状は劇的に改善し始め, 計5回の血漿交換により完全寛解に至った. 本例は術後発症したTTPで原因は不明である. 退院後6か月間, 再発は認められていない. TTPに対しては, 正確な診断と早期の治療開始が救命に不可欠である.
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