52歳の男性. 1993年11月に乳頭部癌にて膵頭十二指腸切除術を施行後, 再発徴候なく外来にて経過観察していた. 1997年5月腹部USにて肝S6に低エコー領域を認めた. 同部はCTで境界不鮮明な低濃度領域, MRIのT1強調像で均一な低信号域, T2強調像で周囲が高信号域に描出された. 腹部血管造影では明らかな腫瘍濃染像は認めなかった. 以上より胆管癌再発などを含めた肝腫瘍の診断にて, 7月肝S6を中心とする切除術を施行した. 切除標本ではS6に径27mm大の白色調の境界明瞭な病変を認めた. 病理組織学的診断断では膿瘍で, 内部に細い菌糸の集簇からなるコロニーを認め肝放線菌症と診断した. 術後経過は順調で第15病日に退院した. 本例は癌切除後に肝腫瘤性病変を認めたため, 再発を念頭においたが, 病変が単一で限局していたために切除術を施行した. その結果, 肝原発放線菌症による膿瘍と判明したまれな1例であり, 経胆管的に感染した可能性が高いと考えられた.