1999 年 32 巻 8 号 p. 2153-2157
僧帽筋原発平滑筋肉腫を合併した遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary non-polyposis colorectal cancer; HNPCC) の1例を経験したので報告する. 症例は55歳の男性. 24歳時に上行結腸癌, 35歳時に横行結腸癌, 54歳時にS状結腸癌で手術を行っている. 家族歴では母に大腸癌, 父に胃癌, 兄弟に大腸癌2人, 肝臓癌1人, 母方の叔父に大腸癌1人, 母方の従兄弟に大腸癌1人を認めた. 今回, 右肩の腫脹を主訴に近医を受診. 穿刺細胞診でclass Vの診断を受け, 当科に紹介され入院となった. 精査の結果, 右側肩甲筋群内悪性腫瘍の診断で, 腫瘍摘出術施行. 病理組織診断では僧帽筋原発平滑筋肉腫であった. 術後6か月目に局所再発および肺転移により死亡した. HNPCCは大腸以外の他臓器にも高率に悪性腫瘍を併発するが, 自験例のように軟部悪性腫瘍を合併した症例は極めてまれである.