抄録
消化器手術後での抗菌剤の腸内細菌叢への影響を検討するため, 胃切除患者7例を対象に術後cefazolin投与 (3g/日, 4日間) し, 前後の糞便中の各種細菌数を算出した. 嫌気性菌総菌数は軽微だが有意 (p<0.05) な減少を示した (前: 10.3±0.34→後: 9.89±0.22 log CFU/g). 菌種別ではBacteroides spp., Eubacterium spp., Lactobacillus spp. (おのおのp<0.01), Veillonella (p<0.05) は有意の低下を, Bifidobacteriumspp. では低下傾向 (p=0.09) を認めた. 嫌気性菌の減少はcefazolinに対する感受性に関係なく同程度減少しており, cefazolinより絶食, 腸蠕動低下, ストレスなど手術の影響が関与したと考えた.好気性菌では菌数に変化なく, Enterococcus, Clostolidium, Pseudomonas aeruginosa, Candidaなどの耐性菌の増加は認めなかった. 以上よりcefazolin術後4日間の予防投与では, 腸内フローラの生態系はほぼ維持されたと推察した. したがって, cefazolinは消化器術後の予防抗菌剤として適切と考えた.