2001 年 34 巻 3 号 p. 239-243
症例は28歳の女性. 上部消化管造影を受けた際に石灰化陰影を指摘された. 腹部CTで膵頭部に辺縁が石灰化した腫瘤を認め, 脾静脈の腹側には脂肪組織を認めた. ERCP検査では主膵管は短く, アーチ状に副膵管とつながっていた. 腹腔動脈造影検査では膵頭部腫瘤はhypovascularであり, 背膵動脈, 横行膵動脈, 大膵動脈を認めなかった. 膵体尾部欠損症を合併したsolid cystic tumor (SCT) の診断で手術を行った. 手術所見では膵頭部に鶏卵大の硬い腫瘤を認め, 膵体部に相当する部位には膵に類似した形態の脂肪組織を認めた. 膵頭部腫瘤の核出術を行い, 脂肪組織の生検を行った. 病理組織検査で膵頭部腫瘤はSCTであり, 膵体部に相当する部位の脂肪組織には膵組織を認めなかった. 本症例は, 膵頭部にSCTを合併し, 先天性膵体尾部形成不全症と体尾部脂肪置換の鑑別が困難な “いわゆる膵体尾部欠損症” と考えられた.