症例は62歳の男性. 開腹歴なし. 主訴は右下腹部痛で, 急性虫垂炎の診断で当院外科に紹介され入院した. 入院時, 右下腹部に限局した圧痛と腹膜刺激症状を認めた. 腹部単純X線検査で近位小腸の拡張とair-fluid levelを, 腹部CT検査では上行結腸に接して卵円形で脂肪よりdensityの高い腫瘤像を認め, 周囲の腸間膜は炎症を思わせる像を呈していた. 虫垂炎や憩室炎の所見は認めなかった. 以上より腹膜垂炎による腸閉塞症の診断で緊急手術を施行した. 開腹すると上行結腸の腹膜垂が炎症性腫瘤を形成し, 小腸間膜がこれに癒着していた. この腹膜垂内には憩室を認めこれも含め切除し埋没縫合を行った. 虫垂は肉眼的には正常と思われたが炎症の原因となっていることも否定できず切除した. 病理組織学的には同時切除した憩室と虫垂には炎症は認めず原発性腹膜垂炎と診断された. 腹膜垂炎の本邦報告56例を集計検討し文献的考察を加えて報告する.