日本消化器外科学会雑誌
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原発巣不明の癌性腹膜炎にて発見された腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の1例
長谷川 健司鎌野 尚子小倉 徳裕奥野 雅史山田 修森田 治雄大沢 常秀高田 秀穂四方 伸明泉 春暁
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2002 年 35 巻 11 号 p. 1749-1753

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抄録

症例は74歳の女性で, 腹膜膨満, 上腹部痛を主訴に受診, 腹部CTにて腹水貯留を認めるも, 血液検査所見にては, 腫瘍マーカーCA15-3, CA125の異常高値を認めるのみであった. 試験開腹術を施行した. 腹膜播種と部分的に肥厚した大網を認めるも, 原発巣不明の癌性腹膜炎の状態で, 術中迅速病理検査では卵巣癌と類似した組織像であった.
Omental cake状の大網を可及的に切除し, 腹腔内にCDDPを散布して閉腹した. 術後の病理組織学的検査で腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断され, CDDPを用いた化学療法を続けた. 8か月後に再開腹したところ, 腹膜播種巣は消失しており, 遺残した大網にわずかな腫瘍遺残を認めるのみであった.初回手術より24か月後の現在, 再発徴候もなく健在である. 腹膜原発漿液性乳頭状腺癌はまれな疾患であるが, 原発巣不明の癌性腹膜炎の鑑別診断として銘記すべき疾患と考えられた.

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