2003 年 36 巻 11 号 p. 1565-1570
重症急性膵炎にabdominal compartment syndrome (ACS) を合併し, 開腹減圧, open wound drainage (OWD) による頻回洗浄, debridement, 頻回の再手術を余儀なくされた症例を経験した. 50歳代の男性で, 腹痛で発症, 重症膵炎の診断のもと持続的血液濾過透析 (CHDF) や蛋白分解酵素阻害剤, 抗菌剤の持続動注療法 (CRAI) などの特殊治療にも関わらず, ACSとなり開腹減圧術を施行したが, 後腹膜脂肪壊死, 鹸化, 壊死性筋膜炎筋炎となり, 横行結腸, 小腸に多発壊死穿孔を認めた. 腸管は浮腫硬化著明で, 膿苔付着, 形状固定状態となり, 切除しても閉鎖すらできず, Witzel式遊離腸瘻とし腹腔内に放置せざるをえなかった. 頻回の手術で, 腸管切除断端破綻部からの腸液漏出を制御し, 腹壁欠損に対しては遊離筋皮弁, 植皮を行い, 入院第302病日に転院可能となった. 重症膵炎の手術適応として, ACSは念頭に置くべき病態で, 腹膜炎を伴ったACS術後の管理としてOWDは有用と思われた.