日本消化器外科学会雑誌
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胃癌にて胃全摘術後の骨転移との鑑別に苦慮した骨軟化症の1例
中川 登山根 哲郎竹田 靖北井 祥三岡野 晋治山口 正秀菅沼 泰中西 正芳谷 直樹安川 林良
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2003 年 36 巻 5 号 p. 363-368

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抄録

進行胃癌で胃全摘術後に腰痛を認め, 骨転移と診断したが, 結果的に骨軟化症であった症例を経験した. 骨転移は, 骨シンチグラムでの集積像, MRIでのT1強調の低信号像, T2強調の高信号像, 血中アルカリフォスファターゼ値 (ALP) の上昇などで診断するが, 骨軟化症では骨シンチグラムでの肋軟骨接合部の濃い念珠状の集積像と血中カルシウム値 (Ca) の低下が特徴的で, MRIでは両者の鑑別は困難であった. 胃切除後の骨軟化症は, 術後早期からの日光浴, 運動, 乳製品の摂取, Caの定期的な検査 (低カルシウム血症時のカルシウム製剤, ビタミンD製剤投与) などで予防・治療が可能であり, 骨転移との鑑別が困難な可能性がある以上, この問題を少しでも解決するためにも, 胃切除後の骨軟化症の予防・治療に努めることが必要と考えられる.

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