日本消化器外科学会雑誌
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肝実質内に腫瘍巣を指摘しえなかった胆管内発育型肝細胞癌の2切除例
近藤 礎堂野 恵三左近 賢人永野 浩昭林 太郎梅下 浩司中森 正二若狭 研一門田 守人
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2003 年 36 巻 6 号 p. 482-487

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抄録

肝実質内に腫瘍巣を指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌はまれで, 当施設肝細胞癌切除例 (484例) の0.4%(2例) に認めた. 症例1は前区域胆管内に腫瘍栓を認め, 前区域切除術と腫瘍栓の摘出術を, 症例2は左肝管内腫瘍栓と肝S8に孤立性の肝細胞癌を認め, 腫瘍栓摘出をともなう肝左葉切除術と肝S8の腫瘤に対するPEITを施行した. 切除標本の病理組織学的検討では, いずれも肝実質内に腫瘍巣は指摘できず, 症例1が低分化型, 症例2は低分化型と高分化型肝細胞癌 (肝S8腫瘤) であった. 予後は, 症例1が術後5か月目に残肝多発再発で原病死. 症例2は残肝多発再発に対してTAEをくり返したが, 術後3年目に原病死している. 肝実質内に腫瘍巣が指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌は低分化で, その予後は不良であった. このような症例に対しては手術に加え, 有効な補助療法の開発が急務と考えられた.

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