日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
空腸瘻を形成した膵浸潤胃癌に対する左上腹部内臓全摘術の1例
相馬 智石本 喜和男大柳 治正
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 37 巻 10 号 p. 1639-1644

詳細
抄録

症例は55歳の男性で, 心窩部痛と体重減少を主訴に受診した. 胃透視および内視鏡検査では胃体上部から幽門部までを占めるBorrmann 3型胃癌で, 胃体下部大彎から空腸へ直接通じる瘻孔を認めた. 開腹すると, 癌は横行結腸間膜, 空腸, 膵へ直接浸潤を示したが, 肝転移と癌性腹膜炎は認めなかったので, 空腸を含めてen-blocに左上腹部内臓全摘術を施行した. 術後の病理診断は低分化腺癌で, 胃空腸瘻管壁は腫瘍細胞で占められるも, リンパ節はNo.3, No.4の1群のみ陽性のn1症例であった. 術後経過は順調で第40病日に退院した. 現在18か月が経過して体重は8kg増加し, 再発なく健在である. 胃癌による空腸瘻の報告はきわめてまれで, 本例は内外を通じて5例目である. 治療は, 隣接浸潤臓器の合併切除を含めた拡大手術が唯一の選択である.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top