抄録
イレウスの原因検査中, 下剤内服を契機に門脈ガス血症と広範囲腸管壊死を呈した閉塞性大腸炎, 穿孔性腹膜炎を併発した大腸癌の1例を経験した. 非常にまれで重篤な病態であったが, second look operationを前提とした緊急手術およびエンドトキシン吸着療法を含む集中治療により救命しえたので報告する. 症例は57歳の男性で, 検査の前処置の下剤内服後, 腹膜刺激症状と, 著明な炎症反応および代謝性アシドーシスが認められた. 腹部CT で腹水, free air, 肝内門脈内のガス像が認められ, 緊急手術を施行したところ, 便臭を伴う暗赤褐色の腹, と回腸末端付近からS状結腸までの広範囲腸管壊死, S状結腸に穿孔を伴った腫瘤を認めた. 循環動態が不安定のため壊死腸管の切除のみを行い, 37時間後にsecond look operationを施行, 小腸ストーマ造設を行った. 術後呼吸不全, DICを併発したが, 集中治療により全身状態は徐々に改善, 第59病日退院した.