大量下血により緊急手術を施行したCrohn病の5例を経験したので報告する. 内訳は男性4例, 女性1例. 手術時の平均年齢は25.8歳, 病型別では小腸型2例, 小腸大腸型2例, 大腸型1例であった. 緊急手術時の下血量は平均3,100mlで, 血圧を維持するために必要とした輸血量は平均2,040mlであり, 2症例でショック状態を呈した. 術前検査および術中所見で出血点が同定できなかった1症例で, 術中大腸内視鏡検査を施行した. 切除範囲は出血点を含む主要病変部の小範囲切除とした. 切除標本所見では地図状~不整形の深い潰瘍底からの出血が特徴的であり, 組織学的にUL-II~IVの潰瘍および裂溝形成が認められた. 潰瘍底近傍に中等度の動脈がみられ, 潰瘍底血管の破綻が大量下血の原因であった. 若い年代に発症した下血症例で, 内視鏡的に地図状~不整形の深い潰瘍形成が認められる場合は, 大量下血を引き起こす危険性があることを念頭に, 治療にあたるべきである.