抄録
内ヘルニアの中でもまれな横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1手術例を経験した. 症例は81歳の男性で, 開腹手術の既往はないが過去に2度原因不明のイレウスでの入院歴があった. 2002年1月初旬腹痛, 腹部膨満, 嘔吐を認め精査, 治療目的に当院内科に入院した. イレウスの診断でイレウス管による減圧を行ったが, Treitz靱帯を越えた付近から管の前進が緩徐となり左上腹部でとぐろを巻くように停滞し, 十分な減圧が得られなかった. そのため保存的治療開始24日後に手術を施行した. Treitz靱帯直上の横行結腸間膜に径約4cmの欠損孔を認め, そこから網嚢腔にほぼ小腸全体が嵌入しており, 横行結腸間膜裂孔による小腸イレウスと診断した. 小腸は容易に整復され血行障害も軽度で欠損孔修復を行った. 術後経過は順調だった. 本症は極めてまれな病態ではあるが, 開腹歴のないイレウスの原因として念頭に置くべき疾患の1つであると考えられた.