日本消化器外科学会雑誌
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鈍的単独膵損傷の2例
中島 康新井 浩士光定 誠塩入 貞明小山 要松浦 篤志若山 達郎
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2005 年 38 巻 10 号 p. 1584-1589

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抄録

単独膵損傷の頻度は鈍的腹部損外傷の中でまれである. 今回, ドメスティックバイオレンス (以下, DVと略記) による鈍的単独膵損傷の2例を経験したので報告する. 症例1は24歳の女性で, 上腹部を踏みつけられ受傷した. 腹部CTで膵体部に低吸収域を認め, ERPにて主膵管損傷を認め, IIIa型膵損傷と診断し, 緊急手術を施行した. 手術所見は門脈・上腸管膜静脈左縁で膵実質の横断を認めた. 若年のため膵温存術を施行したが, 術前に急性膵炎とDICを併発したため, 膵空腸吻合・膵管完全外瘻化および2期的再建を選択した. 術後1年6か月経過し, 膵内外分泌機能に異常はない. 症例2は28歳の女性で, 上腹部と左側腹部を蹴られ受傷した. 腹部CTで膵体部に低吸収域を認めたが, 主膵管損傷はなくII型膵損傷と診断し保存的治療で軽快した. DVによる鈍的膵損傷については, 受傷状況よりその存在を疑い, 慎重な観察および診断法にてその有無を確認する姿勢が必要であると考える.

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