粘液産生胆管腫瘍は, 臨床的に認識しうるほどの多量の粘液を産生する腫瘍で比較的まれな疾患である. 多彩な臨床症状を呈し診断困難例が多い. 粘液産生胆管腫瘍の90%以上が悪性との報告があるが, 術前には確定診断や病変の進展度診断が困難なことが多い. 今回, 我々は約2年の病悩期間の後切除した粘液産生胆管腺腫の1例を経験したので報告する. 症例は63歳の女性で, 2001年6月頃から上腹部痛, 嘔気, 嘔吐の症状を繰り返し, 2003年7月, 同様の症状と黄疸で当院入院. ERCPでVater乳頭部開口部の開大と粘液の流出を認め, 総胆管から左肝管内に再現性のない粘液による陰影欠損を認めた. Intraductal ultrasonographyで左肝管分岐部からB2, B3分岐部にかけて乳頭状の隆起性病変を認めた. 術前診断で悪性所見は得られず, 粘液産生胆管腫瘍の診断で拡大肝左葉切除+左尾状葉切除+肝外胆管切除術を施行した. 病理組織学的診断は粘液産生胆管腺腫であった.