日本消化器外科学会雑誌
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Hs肝細胞癌に対する選択的肝阻血法を用いた系統的肝亜区域切除術による長期予後の改善
牧野 一郎千々岩 一男近藤 千博國枝 良行永野 元章旭吉 雅秀大内田 次郎甲斐 眞弘
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2005 年 38 巻 9 号 p. 1407-1413

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抄録

目的: 亜区域内にとどまる (Hs) 肝細胞癌 (HCC) に対する肝切除術式と肝阻血法の違いが術後長期予後に及ぼす影響を検討した. 方法: HCC切除症例188例中, 肝授動の後, 出血の制御を目的として血行遮断法下に肝切除術を施行したHs-HCC 37例を対象とし, 系統的亜区域切除を行った26例 (HrS群) と非系統的部分切除を行った11例 (Hr0群) の2群間で術後生存率および無再発生存率を比較検討した. また, HrS 群26例中, 全肝阻血法 (Pringle法) を用いた16例 (TPVO群) と選択的阻血法を用いた10例 (SPVO群) の2群間で同様に検討した. また, 術後再発危険因子を単変量および多変量解析を用いて検討した. 結果: 術後生存率, 無再発生存率ともにHrS群がHr0群に比較して良好な傾向を示したが有意差は認めなかった. HrS症例の中で, SPVO群はTPVO群より有意に良好な術後生存率 (p=0.042) と術後無再発生存率を示した (p=0.016). 単変量解析による再発危険因子はHCV感染, 門脈侵襲, および肝阻血法が有意であり, 多変量解析では門脈侵襲のみが有意であった (p=0.042). 考察: Hs-HCC肝切除症例では門脈侵襲が再発危険因子として重要であり, その術後長期予後は選択的肝阻血法を用いた系統的亜区域切除を行った群で最も良好であった. 担癌領域の選択的血行遮断下の系統的切除により, 経門脈的肝内転移が減少することによるのではないかと推察した.

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