膀胱浸潤による症状を契機に検査が進められ, 術前に膀胱浸潤を伴う原発性虫垂癌と診断可能であった1切除例を経験した. 症例は52歳の女性で, 主訴は頻尿および血尿. 膀胱鏡検査で膀胱腫瘍が発見され, 生検および免疫染色検査にて下部消化管由来の腺癌の膀胱浸潤と診断された. 原発巣の検索には骨盤CTが有用で, 原発性虫垂癌と診断した. 手術所見では, 右側膀胱子宮窩に虫垂先端と大網および膀胱右壁が一塊となった, 径約60mm大の腫瘤を認め, 回盲部切除+D3郭清+膀胱部分切除+大網部分切除を施行した. 病理組織所見では, 虫垂原発の中分化腺癌が, 一部嚢胞形成を伴い壁外性に膀胱壁へ浸潤しており, またリンパ節転移は認めず, stage IIIaであった. 術直後の残存膀胱容量は100mlであったが, 膀胱機能は漸次改善した. 術後48か月の時点で無再発生存中である.