日本消化器外科学会雑誌
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十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療法の適応基準と有用性
永野 元章島山 俊夫高橋 伸育今村 直哉河埜 喜久雄千々岩 一男
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2006 年 39 巻 6 号 p. 643-648

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抄録

はじめに: 十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療の適応基準を明らかにすることを目的とした.方法: 1997年4月から2004年3月までに入院治療した十二指腸潰瘍穿孔症例80例を対象に, 治療法により保存的治療群と手術治療群に分類し比較した. 保存的治療の適応は全身状態良好でUS, CTで腹水が少量で限局しているものとし, 1999年以降はこれに上部消化管造影検査で造影剤の漏出がないか, あっても漏出距離が2cm以下で限局しているものという条件を加え, この適応基準の妥当性を検討した.結果: 80例中46例に保存的治療を行い, 5例で腹腔内膿瘍に対する経皮的ドレナージを, 6例で手術に変更し, 結局40例 (87%) に完遂できた. 保存的治療完遂群が有意に若く (p<0.01), 入院日数は平均14日で手術治療群の平均22日と比べ有意に短かった (p<0.01). 上部消化管造影による適応基準導入後は保存的治療の完遂率は向上し, 腹腔内膿瘍の合併も低下した.考察: 今回の十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療の適応基準は, その完遂率を向上させ, 有用で簡便な保存的治療適応決定の指針になることが示唆された.

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