日本消化器外科学会雑誌
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Granulocyte-colony stimulating factor産生胃癌の1例
宇治 祥隆草野 敏臣飯田 洋也湯澤 浩之高尾 貴史島袋 誠守立花 一幸
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2006 年 39 巻 6 号 p. 653-659

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抄録

症例は76歳の女性で, 心窩部痛を主訴に近医を受診し, 上部消化管内視鏡検査の結果, 胃体上部後壁に2型進行胃癌を認め, 当院紹介となった. 血液検査で, 貧血と白血球27,700/μl (成熟好中球96%), Granulocyte-colony stimulating factor (以下, G-CSF) 77pg/mlと高値を認め, 明らかな感染源もなく, G-CSF産生胃癌の疑い膵尾部脾合併切除術を施行した.病期分類はT4, N0, H0, P, CY0, M0, Stage IIIAで, 病理学的検査所見は低分化型腺癌で一部に扁平上皮癌様増殖を認め, 腫瘍間質には好中球の浸潤を認めた. 術後に白血球数, G-CSF値は改善したが, 3か月後に多発性肝転移を認め, 白血球数, G-CSF値の再上昇を認めた. 肝動注化学療法を施行するも術後170日目に死亡した. 剖検では肺, 小腸や全身リンパ節にも転移を認めた. 原発, 転移巣どちらもG-CSF免疫染色では陰性であったが, 血液検査結果と臨床経過より, G-CSF産生胃癌と診断した.

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