日本消化器外科学会雑誌
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急性腹症診療における腹部CTの有用性の検討
境 雄大八木橋 信夫大澤 忠治原田 治伊藤 博之
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2007 年 40 巻 1 号 p. 15-25

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抄録
目的: 急性腹症の診療におけるCTの有用性を検討した. 対象・方法: 急性腹痛で入院した91例を対象として, 緊急CT群70例, 緊急CT非施行21例に分類した. さらに緊急CT群を腸閉塞29例, 急性虫垂炎および急性虫垂炎と鑑別すべき疾患群36例, 消化管穿孔4例, その他1例に分類し, 緊急CT群の入院時診断の正診率を検討した. 結果: 緊急CT群の最終診断は腸閉塞では癒着性イレウス16例, 大腸癌5例, 外ヘルニア3例, その他5例, 急性虫垂炎・鑑別を要する疾患では急性虫垂炎25例, 大腸憩室炎3例, 骨盤腹膜炎3例, 卵巣出血2例, その他3例, 消化管穿孔では上部2例, 下部2例であった. 緊急CT群の入院時診断の感度, 特異度, 正診率はそれぞれ91.1%, 100%, 91.4%であった. 緊急CT群の腸閉塞, 急性虫垂炎および急性虫垂炎と鑑別すべき疾患群, 消化管穿孔の入院時診断の正診率はそれぞれ96.5, 88.9, 75.0%であった. 緊急CT群で正確な入院時診断ができなかった症例は6例で, 盲腸周囲膿瘍3例, 急性虫垂炎1例, 宿便性S状結腸穿孔1例, 胃石小腸嵌頓1例であった. 後方視的にCTを評価すると4例は入院時診断が可能であった. 考察: 急性腹症の診断において緊急CTは腸閉塞・虫垂炎の鑑別, 微量の遊離ガスの検出, 消化管穿孔の穿孔部位の推定に有用であった. また, 緊急CTは急性腹症の治療方針の決定に有用であった.
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