2007 年 40 巻 10 号 p. 1679-1683
胃癌の診断にて腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行し, 切除標本から胃結核の合併を認めた1例を経験した. 症例は62歳の男性で, 主訴は食思不振. 来院1週間前から食思不振が出現し, 徐々に顔面蒼白となりタール便も見られるようになる. 来院時貧血を認め, 緊急内視鏡検査を施行したところ胃角部全体を覆う巨大潰瘍を認めた. 内科的治療を行ったが難治性であり, 経過観察中の生検にて胃癌の診断を得たため腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した. 術後は発熱が続き, 切除標本の病理組織学的検査結果より胃結核症の合併を認めた. 抗結核薬にて治療を行ったが, 全身状態は悪化し死亡退院となる. 原因は手術侵襲による免疫力低下による結核症の増悪と考えられた. 結核症は現在も散見され, 多彩な病像を呈することがあるため, 診断や治療に際しては慎重な対処が必要である.