2007 年 40 巻 11 号 p. 1799-1804
症例はB型肝炎ウイルス感染の既往のある73歳の男性で, 2005年2月右季肋部痛を主訴に近医を受診. 肝腫瘍精査にて当院紹介となった. CT上, 肝右葉, 内側区に16×15×12cmの巨大な肝細胞癌を認め, 3DCTで左肝静脈のV2とV3が明瞭に描出されており, 腫瘍はV3に長さ約3cmにわたり接していた. 同年7月手術を施行, 肝右三区域切除とともにV3を合併切除, 肝側のV3と下大静脈間を直径1cm のGore-Tex®expanded polytetrafluoroethylene (ePTFE) グラフトリング付人工血管で置換再建した. 病理組織学的には肝細胞癌は切除したV3には接していたが浸潤は認めず, 切除断端は陰性であった. 術後は順調に経過し, 術後6日目よりワーファリンを開始, 19日目に退院となった. 術後1年経過し残肝再発・骨転移を認め加療中であるが, 6か月後の造影CTでグラフトの開存性は確認された. 肝切除に際し, 3DCTは術前の脈管の解剖学的な把握のみでなく, 血行再建後の開存性の評価にも有用であった.