日本消化器外科学会雑誌
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腸間膜膿瘍手術が発症の誘因となった小腸多発憩室に起因した亜急性連合性脊髄変性症の1例
服部 正興鈴木 秀昭柴原 弘明久世 真悟高見澤 潤一
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2008 年 41 巻 2 号 p. 235-240

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抄録
症例は55歳の女性で, 下腹部痛を主訴に当院を受診した. 腹部CT・超音波検査で限局性の小腸炎, 膿瘍を疑ったが, 炎症所見が強く手術を行った. 最大5cmの憩室を小腸腸間膜側に多数認め, うち回腸末端より80cmの憩室が間膜に穿通し膿瘍を形成していた. 小腸部分切除術 (25cm) を施行し順調に退院したが, 術後3か月目に下肢知覚鈍麻と失調性歩行が出現した. ビタミンB12が68pg/mlと低値で, MRI, T2で胸椎後索に高信号域を認めたため亜急性連合性脊髄変性症 (subacute combined degeneration; 以下, SCD) と診断し, ビタミンB12投与で歩行障害は改善した. 小範囲の小腸切除術後早期にSCDを発症したことより, 多数の大きな小腸憩室によるビタミンB12欠乏が術前よりあったと推察された. 多発小腸憩室を有する患者に絶食を必要とする開腹手術をする際は, ビタミンB12の評価をすべきと思われた.
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