日本衛生学雑誌
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鉤虫の感染経路に関する研究-特に人体実験を主とした考察-
水野 哲夫柳沢 利喜雄
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1963 年 18 巻 4 号 p. 311-335

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抄録
ズビニ・アメリカ鉤虫の人に対する感染経路を決定する為に, 鉤虫仔虫による人体感染実験を行い次の如き結果を得た。
1. アメリカ鉤虫感染期仔虫を人に経皮的に感染させた場合, その感染成功率は10.3%, 経胃的には0.09%である。従つてアメリカ鉤虫の人に対する感染様式は, 経皮的な経路が主道である。
2. ズビニ鉤虫感染期仔虫では経皮的には3.0%, 経胃的には54.9%が感染に成功する。従つてズビニ鉤虫の人に対する感染様式は, 生物的には経胃的なそれが主道である。
3. ラットや仔犬にアメリカ鉤虫感染期仔虫を経皮感染させ, 肺に移行した同仔虫を採取して人に経胃投与すると, 同仔虫の感染成功性が高まつた。この事からアメリカ鉤虫が人に感染成立する為には, 肺移行が必要と考えられる。
4. 経胃的にもアメリカ鉤虫感染期仔虫は, 極めて僅かではあるが感染が成立する。この理由解明の為にマウスの胃中にアメリカ鉤虫感染期仔虫を投与すると, マウスの肺及び小腸から発育を示した同仔虫を採取し得た。この事からアメリカ鉤虫感染期仔虫が経胃投与されると, 胃・小腸からマウスの体内に侵入し, 肺を経て再び小腸に戻つてくるものと思われる。そして上述の事は多分人に於ても然りであろう。
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