抄録
ラット(ウイスター系,オス)を次のようにA(正常飼糧,正常水),B (PCB 200ppm飼糧,正常水),C (PCB 500ppm飼糧,正常水),D (PCB 500ppm飼糧,ABS 1,000ppm水),E(正常飼糧,ABS 1,000ppm水),の5群に分け6週間飼育し,その後取り出した肝臓の切片を用いて,コレステロールの酢酸からの合成,胆汁酸への分解及び燐脂質へのリノール酸の取り込みを調べた。またラットの血漿,赤血球,肝臓の脂質及び血漿中のアスコルビン酸を測定した。
PCBを投与したラットの肝臓では,酢酸からのコレステロール合成およびコレステロールの胆汁酸への分解が対照群に比べて低下していた。しかしPCB 500ppmの飼糧とABS 1,000ppmの水を投与された群でのコレステロールの胆汁酸への分解は対照群と有意差はなかった。リノール酸の燐脂質への取り込みは各群差はなかった。
PCB 200ppmの飼糧投与により,血漿コレステロール,肝臓コレステロール,肝臓トリグリセライド上昇し,PCB 500ppmの飼糧では血漿の遊離コレステロール,燐脂質もさらに上昇した。またPCBを投与されたラットでは,赤血球中の燐脂質の減少がみられ,コレステロールも減少したが対照群と有意差は示されなかった。さらにPCB投与群では対照群に比較して約3倍量の血漿アスコルビン酸が検出された。
ABSの影響については,それ単独では血漿,肝臓の各脂質に影響しなかったが,ABS 1,000ppmの水とPCB 500ppmの飼糧を同時に与えると,肝臓のコレステロール,燐脂質はPCB 500ppmの飼糧のみを与えたものより有意に増加した。またさらにABSの投与により,赤血球中のコレステロール,燐脂質の減少が観察された。