日本衛生学雑誌
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兵庫県一農村地区における高血圧発生率と食塩摂取傾向に関する疫学的研究
阪本 州弘勝野 真吾吉本 佐稚子木下 博田中 登美子
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1977 年 32 巻 5 号 p. 624-629

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抄録
兵庫県多紀郡において昭和49年度から脳卒中発生予防の疫学調査を行った。
先づ,脳卒中発生率の異なったN, J地区を選び,食生活の調査を行った。地区め食塩摂取傾向は地区住民40名の1日全尿のNa排泄量及び単位時間当りのNa排泄量及び各回のNa/Cr比の値等を検討した。その結果Na/Cr比は,時間当りのNa排泄量と相関が高いことが解ったので,この指標により,食塩摂取傾向をみた。N地区では食塩摂取傾向はJ地区よりも1.5倍程高い値を示している。又,高血圧の発生率は今回は最高血圧150mmHg以上又は最低血圧90mmHg以上の値を用いて検討した。
最高血圧においては各年齢層においても異常者はN地区においてはJ地区よりも1.5倍高い傾向がある。
この地区における高血圧発生率の異いには,食塩摂取の相対的な量の変化がよく対応している。このため食塩多量摂取の傾向が高血圧多発の傾向に関連しているものと思われる。
次に,食塩摂取傾向をNa/Creatinine比300mEq/gでわけ,高い群と低い群における年齢別血圧値の中央値をみると,ことに若年者においてNa摂取傾向が高い群で血圧値が高い傾向を示した。このため兵庫県のこの地区における脳率中予防,ことに高血圧発生予防には食塩摂取の制限が重要であるが,ことに又若年者における食塩摂取を少なくすることも重要なことであると思われる。
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