ラットに5%フタル酸ジブチル(DBP)含有粉末飼料を35∼45日間与えた結果,成長抑制,肝肥大,精巣萎縮が認められた。又,同時に肝ミトコンドリアの呼吸抑制が認められた。この呼吸抑制はコハク酸およびピルビン酸脱水素酵素の活性低下によるものであった。
このようなDBPのミトコンドリアに及ぼす影響はin vitroでも確認された。即ちin vivoで観察された呼吸活性の低下と同程度の低下はDBP100μM以下の濃度で認められ,又同様にコハク酸脱水素酵素活性の低下は150μMで認められた。
又,亜ミトコンドリア粒子を用いた実験結果から,DBPは容易にミトコンドリア内に入り,コハク酸の膜透過には変化を与えず,コハク酸脱水素酵素活性に直接作用することが示された。