抄録
本研究では,健康管理の観点から,夏季及び冬季における各個人の至適速度でのジョギングが尿酸動態に如何なる影響を及ぼすかについて,血中(血清尿酸)及び尿中への尿酸排泄動態を明らかにすることを目的とした。
主な結果は以下の通りである。
1) 血中乳酸及びNH3は両季節ともジョギング終了直後に有意な上昇(p<0.05)を示しており,特に夏季の上昇が冬季の値に比べて高く,血中NH3においては有意差(p<0.05)が認められた。
2) ジョギング後において,夏季の血清尿酸値は上昇し,直後7.5±0.5mg/dlと最高値となった。特に正常域(7.5mg/dl以上)を上回るものが6名中3名認められた。さらに,それ以降は減少傾向がみられるものの5h後まで有意な高値(p<0.05)を示し,翌日の安静時(Rest2)においてもジョギング前値までの回復には至らなかった。一方,冬季の血清尿酸値では,ジョギング後に僅かな変動(上昇)は見られたものの,翌日には低下しジョギング前と同程度の値を示していた。
3) 両季節における尿酸クリアランス(CUA)は,いずれもジョギング直後及び1h後に有意な低下(p<0.05)を示していた。しかしながら,その後は上昇し,3h後には安静時レベルに回復していた。両季節間においてその変化に統計的な違いは認められなかった。また,24時間の尿中尿酸排泄量は両季節間において違いが見られず,またこの値は両季節での運動を実施していない1日の尿酸排泄量と同レベルであった。
4) 尿中oxypurines排泄量(μg/min)では,ジョギング1h及び2h後において夏季の排泄量が冬季のそれを上回っていたものの,3h後には安静時レベルに回復(低下)していた。
以上の結果から,健康の保持・増進を目的とした至適速度でのジョギングでも,季節(環境温度等)の違いによってその変動は異なっていた。特に暑熱環境下におけるジョギングの実施は,著しく血清尿酸値を上昇させる。この要因として,血中NH3や尿中oxypurines排泄量の増大などに見られる骨格筋における尿酸産生の亢進(purine nucleotide分解)が原因と思われる。したがって,運動のみならず暑熱環境も尿酸産生を相乗的に亢進させる要因であることが示唆された。