医療経済研究
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特別寄稿
マッチング理論とその応用:研修医の「地域偏在」とその解決策
鎌田 雄一郎小島 武仁和光 純
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 23 巻 1 号 p. 5-20

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抄録

日本の新医師臨床研修制度は2004 年度から必修化され、同時に、研修医がどの病院で研修するかの組み合わせ(マッチング)を明確なルールに従って決める研修医マッチング制度が導入された。この研修医マッチング制度は医師・病院双方の希望をよく反映する一方、地方病院での医師不足を助長するとの批判から見直され、2009 年からは都道府県別に地域定員を設けて行うメカニズムに変更された。本稿の目的は、この制度改変の問題点を指摘し、代替的な改革案を提示することである。そのために、先ず研修医マッチング導入の歴史的背景を概観し、続いてマッチング問題を制度(メカニズム)設計という経済学の問題として定式化する。次に、マッチングメカニズムの安定性や耐戦略性という、経済学的観点から望まれる性質を詳解する。そしてこれらの準備のもとに必修臨床研修導入当初のメカニズムと都道府県別地域定員のもとでの変更版メカニズムを検討し、後者では安定性が達成されず、また単純な改訂案では耐戦略性が達成されなくなることを示す。そこで本論文では、鎌田・小島(2010年、スタンフォード大学ディスカッション・ペーパー)に基づき、都道府県別定員設定のもとでも安定性と耐戦略性を達成できるFlexible Deferred Acceptanceメカニズムとよばれる改善案を提示する。

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© 2011 本論文著者

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