2011 年 23 巻 1 号 p. 39-57
本稿では、他職種と比較した介護労働者の賃金が離職に与える影響が勤続年数ごとに異なるかどうかに焦点をあてて分析を行った。検証したい仮説は、勤続初年の方が、それ以降の勤続年数と比較して、相対賃金が離職に与える影響が大きいかどうかである。データは、財団法人介護労働安定センターが実施した『2007年度介護労働実態調査』の事業所調査票における全国1,633事業所の個票データである。分析対象は、介護事業所別に利用可能な、職種別(施設系・訪問系)・就業形態別(正規・非正規短時間)の早期離職者数であり、勤続1年未満離職者数と、勤続1年以上3年未満離職者数である。職種別・就業形態別に早期離職関数を推定した結果、施設系正規職について、相対賃金が高いほど、勤続1年未満の離職者数を低下させる有意な影響が認められ、勤続1年以上3年未満の離職者数へ与える影響は認められなかった。その他の介護職については、有意な影響は観察されなかった。本稿で得られた結果より、職員の勤続年数に応じた賃金制度を検討する際、勤続年数3年未満の施設系の正規労働者については、勤続1年目の賃金を引き上げた方が、勤続1年以上3年未満の賃金を引き上げるよりも、介護労働者の定着促進につながる可能性が示唆された。