抄録
人口の高齢化、医療技術の高度化に伴う医療費の増大を背景に、医療経済への関心が高まっている。2019 年度の日本の総医療費は 44 兆円を超え、薬剤費は約 20%を占めている。医療費の増大には、様々な要因があるが、特に生活習慣病の医療費が問題となる。そこで本研究では、2型糖尿病の治療薬として高頻度に処方される薬剤の一つであるメトホルミンの使用状況および臨床現場(病院)における採用の現状について調査した。その結果、NDB オープンデータを用いたメトホルミンの使用状況は、2015 年度から年々増加しており、2020 年度には 22 億錠以上使用されていた。また、調査したすべての臨床現場(病院)でメトホルミンは採用されていた。しかし、80%以上の施設で規格が 250mg/錠のみの採用であった。そのため、1 回量が 500mg の場合、250mg/錠を 2 錠で調剤を行っていた。メトホルミンは比較的安価な薬剤である が、2022 年 4 月現在で 250mg/錠と 500mg/錠の後発医薬品の薬価は同額(10.10 円)と設定されている。したがって、1 回量が 500mg の場合、500mg/錠を 1 錠での調剤と比較して、250mg/錠を 2 錠での調剤では薬剤費が 2 倍となる。病院内の採用の可否に関わらず、一般名処方の場合では外来処方箋の記載表記によっては、保険調剤薬局の薬剤師の判断で適切な錠剤規格に変更することが可能である。そこで、単錠(500mg/錠を 1 錠)と複数錠(250mg/錠を 2 錠)の薬物溶出挙動の影響を評価し、同等であることが明らかとなったため、現行の治療を継続したままでも、薬剤師の判断で薬剤費を節減できる可能性が示唆された。