人文地理
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研究ノート
携帯型GPSとバイトカウンター首輪を用いたウシの採食行動調査―ブラジル・南パンタナールのファゼンダ・バイア・ボニータの事例―
丸山 浩明仁平 尊明
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2007 年 59 巻 1 号 p. 30-43

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抄録

ウシの採食行動に関する詳細なデータは,持続的な牧畜経営の基礎となる牧養力の算定に不可欠である。本研究は,天然草地に依存する伝統的な肉牛の子取繁殖・素牛育成地域であるブラジル・南パンタナールのファゼンダ・バイア・ボニータを事例に,放牧牛(雌牛)に携帯型GPSとバイトカウンター首輪を同時に装着して,ウシの移動や休息,採食行動を詳細かつ連続的に解明した。雨季に実施した現地調査の結果,次の諸点が明らかになった。(1)3頭のウシを標本として観測を行った結果,採食量には一日あたり約5~8回のピークが認められた。(2)採食量のピークのうち1~2回は,午後10時~午前2時頃までの夜間にみられた。(3)夜間の気温が大きく低下した次の朝には,ウシの採食行動が鈍化した。(4)1日あたりのウシの移動距離は約10~19 kmであり,従来の研究で予想されたよりも長かった。(5)ウシの行動と土地利用との関係をみると,移動距離が長いのは森林,一時的草地,通年草地である。また,採食量は一時的草地,通年草地,森林の順に多い。本研究が提示したこれらの結果は,牧養力の厳密な算定に不可欠なウシの採食量データとなりうる。さらに,湿地の脆弱な天然草地を維持管理しつつ,持続的な牧畜経営を実現するための牛群管理システムの提案にも役立つものと考えられる。

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© 2007 人文地理学会
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