人文地理
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サンフランシスコ日本町のまちづくりにみるエスニック都市空間の保存と経済再建
小田 隆史
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2014 年 66 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

本研究は,米国カリフォルニア州サンフランシスコにある日本町の近年の市民参加型まちづくりを事例に,衰退が進む日本町の歴史文化資源の保存,経済再建,そしてそれに関与する多様なステークホルダーの合意形成をめぐる諸課題について論じる。日本町は,連邦政府による強制移住政策,日米関係の歴史や経済情勢に翻弄されながら100年以上存続してきたが,戦後の再開発や日本資本の参入と撤退などにより,その構成や特徴は変化した。2000年代,日本資本の撤退が続き,町の衰退を懸念した地元関係者によって日本町保存運動が展開され,具体的な将来計画を描く参加型まちづくりが制度化された。しかし,多様な主体の「同床異夢」の現実が露呈し,利害調整が困難となったため計画は一時頓挫した。本稿は,その時点での関係者への聞き取りをもとに,新自由主義的都市政策のもと多元的価値観を有する主体が関与するようになったまちづくりの特徴と課題の一端を提示する。

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© 2014 人文地理学会
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