人文地理
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展望
パレスチナ・イスラエル紛争における宗教と政治に関する地理学的研究の動向
今野 泰三
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2016 年 68 巻 2 号 p. 173-194

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抄録

本稿では,宗教の地理学と政治地理学の研究動向を,宗教と政治(特に国家建設やナショナリズムに動機付けられた領土問題や民族紛争)の関係性がどのように扱われてきたかという問題に焦点を当てて概観する。その上で,この問題が顕著に現れているパレスチナ・イスラエル紛争に関する地理学的研究の方向性を論じる。特に,当該紛争において宗教と政治が深く関わるユダヤ人入植地と民族宗教派に関する先行研究を整理・検討し,以下の2つの研究課題が重要であると論じる。第1は,紛争当事者のアイデンティティや他者との関係性を規定する,死/死者に関する語りと表象である。第2は,紛争当事者間の境界と規範と秩序の動態的な相互作用である。本論考では,これら2つの課題について筆者が行った研究の内容と意義を論じた上で,今後の研究課題として,1967年以降の入植地問題とそれ以前のシオニスト入植史を関連づける作業,特に宗教キブーツ運動とグーシュ・エムニームとの関係性をシオニスト入植史とパレスチナ地域史の中に位置づけて再検討していく作業が必要であると論じる。

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© 2016 一般社団法人 人文地理学会
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