人文地理
Online ISSN : 1883-4086
Print ISSN : 0018-7216
ISSN-L : 0018-7216
研究ノート
指定管理者制度の活用からみた NPO 法人の持続可能性―京都府を事例に―
岡田 眞太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 68 巻 3 号 p. 355-373

詳細
抄録

本稿の目的は,NPO が持続可能性を確保するための公的資金の一つである指定管理者制度を取り上げ,当制度の活用を通して NPO 法人がいかに持続可能性を確保しているのかについて検討することである。対象は当制度を活用する京都府内の16の NPO 法人であり,これらの法人へのインタビュー調査を行った。その結果,以下のような知見が得られた。NPO 法人が指定管理者制度を活用する経緯は,既存の NPO 法人が当制度を活用する類型 A と,施設の管理のために組織された NPO 法人が当制度を活用する類型 B とで異なっている。その性質上活動資金の獲得が難しい NPO 法人にとって,当制度がもたらす基本的なメリットとしての財政的・人的・物的資源は,初期投資を抑えて事業を始動したり,あるいは拡大したりするための重要な資源供給源となっている。また,NPO 法人側は組織内ないし組織間における戦略の実践を通して,指定管理者制度によるメリットを増大させ,デメリットを軽減させ,ときにはデメリットからメリットへと転じさせることで,持続可能性を確保していることが明らかになった。特に,類型 B に該当する NPO 法人は,類型 A の法人より,指定管理者制度への依存度が比較的大きく,行政との関係調整という戦略をより重視している。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 人文地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top