人文地理
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研究ノート
旅人の属性にみる名所見物の特徴―武蔵国から京都への旅日記を事例として―
谷崎 友紀
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キーワード: 近世, 京都, 名所, 旅日記, 武蔵国
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2017 年 69 巻 2 号 p. 213-228

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抄録

本稿の目的は,京都を訪れた旅人の居住地や身分・職業などの属性によって,名所の選択に生じる差異とその要因を明らかにすることである。そこで,武蔵国からの旅人を,江戸居住者と江戸近郊居住者に分類した。そして,名所訪問を行った日数,訪れた名所や,両者のルートなどの比較を行った。その結果,以下の知見が得られた。まず,江戸居住者は近郊居住者よりも長い日数を名所見物に費やし,多くの名所を訪れていた。次に,両者では選択したルートに差異がみられた。ルートが定型化する近郊居住者とは異なり,江戸居住者の行動は多様であり,広範囲の名所を網羅的に訪れていた。そして,江戸居住者は近接した名所をすべて訪れる傾向がみられた。これは,彼らには「知識人」といえる性格を持つ者が含まれ,時間的に余裕があっただけではなく,名所に関する知識・教養を持っていたためである。

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© 2017 一般社団法人 人文地理学会
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