人文地理
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論説
都市郊外における病床へのアクセシビリティの将来推計―大阪都市圏北部の事例―
谷本 涼
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2017 年 69 巻 4 号 p. 425-446

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抄録

日本の都市部では,特に医療・介護サービスへのアクセシビリティの不足と格差が,将来的に問題化することが予想される。本稿では,二段階需給圏浮動分析法によるアクセシビリティ分析と,現在の政策の検討を通じて,都市郊外(大阪都市圏北部)における病床へのアクセシビリティの変容やその問題点を考察した。アクセシビリティの現状分析からは,病床へのアクセシビリティには,供給総量の不足と,移動手段間・地域間での格差という二つの問題が存在することが明らかになった。また,公共交通の改善と病床機能別の病床数調整を想定した2025年のアクセシビリティの将来推計から,「不足と格差」の現実的な解決には,地域の既存の資源を効率的に活用するための,多面的なアプローチが必要となることが明らかになった。加えて,国と都道府県の医療政策による入院患者の削減には,受け皿としての介護施設の容量が大きな問題になる可能性も示された。現在の政策の考察からは,医療・介護へのアクセシビリティの確保には,各自治体の都市計画と専門的・広域的な医療・保健政策の連携の実現が必要であることと,その上で各自治体が自らの都市計画の妥当性を柔軟かつ批判的に検討し続ける必要があることが示された。

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© 2017 一般社団法人 人文地理学会
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