人文地理
Online ISSN : 1883-4086
Print ISSN : 0018-7216
ISSN-L : 0018-7216
論説
東日本大震災後の人口減少と地域社会の再編―宮城県気仙沼市浦島地区の津波災害とレジリエンス―
矢ケ﨑 太洋
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 71 巻 4 号 p. 371-392

詳細
抄録

東日本大震災は三陸沿岸地域に大きな津波災害をもたらした。被災した地域社会は,防災集団移転などの住宅の高台移転によって津波リスクを低減した。その一方で,三陸沿岸地域では住民の転出によって人口減少の傾向にあり,地域社会は大きな再編を迫られつつある。本研究は東日本大震災後に人口減少と地域組織の改変を経験した気仙沼市浦島地区を対象として,地域社会の再編の過程と人口減少への対応について,レジリエンスの概念を用いて明らかにすることを目的とする。地域社会はレジリエンスが発揮されることにより再編され,その形態には災害以前の地域性が反映される。浦島地区は東日本大震災の津波によって大きな被害を受けたが,過去に大きな津波の被害を経験した集落は,既に住宅が高台に移転していたため被害が少なかった。被害の大きかった3集落はそれぞれ被災以前の地域組織を基盤とした防災集団移転を実施した。その過程において,被災以前に形成された集落を越えた広域な関係性が集落間の情報交換を容易にし,情報の共有が復興を促進した。浦島地区は被災後に住民の転出によって人口が減少しており,転出者が集落の行事に参加できる賛助会や,広域なまちづくり組織である浦島地区振興会を結成することで転出者との関係性を維持する。被災した地域社会はレジリエンスが発揮されることにより,災害に強く人口減少へ対応した形態に再編される。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 人文地理学会
次の記事
feedback
Top