人文地理
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論説
近代仙台における法定都市計画の展開と市域拡張―「大仙台」建設の構想と実態―
齋藤 駿介
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2022 年 74 巻 1 号 p. 1-26

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抄録

本稿では,近代仙台における法定都市計画の展開と市域拡張の関係を,周辺町村の動向に着目しながら明らかにする。仙台都市計画の主眼は周辺町村の市街化・工業化に置かれ,その展開に呼応して市域拡張が3次にわたって実施された。仙台市主導の第1次市域拡張は先行して指定された都市計画区域と同域を対象としており,直近の法定都市計画に必要な領域を取り込むという目的が明確であった。一方,第2・3次市域拡張は,隣接村からの強い要望の下で実施された。この背景には,法定都市計画の進展が周辺地域に都市計画・市域拡張の恩恵を意識させ,それと同時に周辺地域内での競争意識を駆り立てたことがあり,仙台では先行する市域拡張が次なる市域拡張を惹起させていた。さらに,都市計画は一貫して市域拡張の必要性を主張する根拠として引用されたが,合併の必要性が差し迫ってはいなかった第2・3次市域拡張ではその役割がより強調された。こうして法定都市計画と市域拡張の実施による「大仙台」建設への期待は高まり続けたが,実際には都市計画事業の進捗は大幅に遅延していた。以上の考察から,近代仙台における法定都市計画は実際の都市空間を改変する技術としての意義以上に将来的な近代都市「大仙台」建設のビジョンを示す意義が重視されており,市域拡張は「大仙台」の展開領域を具体的に提示することで遅延しがちな法定都市計画を補完する役割を果たしていたと考えられる。

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© 2022 一般社団法人 人文地理学会
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