本稿は,経済地理学および隣接分野における地域発展に関する諸理論と政策を展望し,空間の捉え方に関する視点の分類と市場/社会のバランスの両面から,それらの図式化を試みるものである。本稿において,空間に関する視点は領域的視点とネットワーク的視点に分けられる。領域的視点とは国や地域などの領域に焦点を当ててその内部の経済活動を考察するものであり,ネットワーク的視点は領域を超えて広がる経済主体のネットワークとそのつながり方に焦点を当てるものである。一方,それらの議論は,市場とそれによる経済成長を重視する立場と,市場の負の側面を考慮し社会的要素を重視する立場の間のバランスによっても分けられる。本稿はまず,領域的アプローチとして,空間経済学・都市経済学と制度派経済地理学・進化経済地理学と,それらとの比較のため内発的発展論をとりあげ,それらを市場と社会のバランスの観点から位置づけた。次に,ネットワーク的視点として,グローバル価値連鎖論とグローバル生産ネットワーク論,ポスト開発論について同様に両者のバランスの視点から検討した。最後に,タテ軸を視点,横軸を市場と社会のバランスとしてそれらの関係を図式化して示した。このことは地域発展とそのための政策の議論の深化に貢献するものであると考える。