人文地理
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阪神の工業
京浜との対比において
板倉 勝高井出 策夫竹内 淳彦高橋 潤二郎
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1968 年 20 巻 1 号 p. 1-32

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抄録
本研究の目的は,京浜の工業集団にみられた組立工業,日用消費財工業という2大区分によって阪神の工業集団を検討した場合,その範囲はどこまでか,また京浜に見出された多種小単位生産という特色が見出せるかという点にあった。そしてこれを明らかにするために,京浜と同じ方法で阪神を分析することにしたが,京浜の研究に際して弱点であった分布現象の把握を計量化することに心がけ,計量的操作の上に立って定性分析を行なった。
その結果京浜と対比しうべき阪神工業集団の範囲は,意外にも神戸や京都をのぞいた大阪と尼崎・西宮の範囲に止まることがわかった。工業集団の範囲は京浜より小さいが,構成は似ており,核心地域のcomplexを中心とした地域配置と,全国流通商品が生産されることは同じである。
しかし大阪にあっては多分に農村的・商業的・部品的で,輸出が多く,量産体制をめざしているために,京浜におけるような多種小単位生産ということを特色として見出すことはできなかった。また量産的であるために日用消費財や組立下請工場の移動が可能で,その移動範囲も大きい。そのことがいわゆる関西経済の地盤沈下の内容の一つであり,大阪においては工場分散の可能性が東京より大であるということができよう。
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