人文地理
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日本のアニメーション産業と家庭用ビデオゲーム産業
立地・労働市場・企業間関係
半澤 誠司
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2004 年 56 巻 6 号 p. 587-602

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抄録

アニメーション産業と家庭用ビデオゲーム産業は, 現代日本の最も広く知られた文化産業のうち2つである。両産業は, 高い離職率と東京への集中という共通の特徴を有する。しかし, 詳細な立地や, 労働市場, 企業間関係という点では明らかに違いがある。ゲーム会社に比べてアニメーション会社の立地は, 国単位ではより東京に, 地域単位ではより東京西部に集中する。ゲーム産業の労働者は, 新卒であろうと中途であろうと公募を通じて採用され, 時折深刻な人間関係の悪化があるためしばしば企業間を移動する。逆に, アニメ産業では, 明らかな人間関係の悪化は少ない。アニメの離職者のほとんどは, フリーランサーになるか自分の会社を設立するかして, そうでなければ完全に当該産業から離れる。ゲーム会社は, アニメ会社に比べ取引関係が少なく, 取引先を替える柔軟性も小さい。
これらの違いは, 特有の流通システム-アニメ産業における「合法寡占的」テレビキー局と, ゲーム産業におけるプラットフォームホルダーの存在-と特有の制作工程-前者の「ウォーターフォール工程」と後者の「リバイズド工程」-から生じる。それらは, 産業レベルで相互に影響するだけではなく, 個々の企業の行動にも影響を与える。

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