抄録
1989年から2003年までに手術を主体とした治療が行われた中咽頭扁平上皮癌26例を対象とした。症例を術前に動注化学療法を未施行の症例群(非動注群)11例と施行した症例群(動注群)15例とに分け,治療成績,特に原発巣制御率を比較検討した。原発制御率は非動注群では45.5%,動注群は86.7%であった。IV期の症例に限ると非動注群40.0%,動注群77.8%であった。非動注群の原発巣再発6例中5例は切除深部マージン(副咽頭間隙,中咽頭と上内深頸の間),上方マージン(上咽頭断端,咽後リンパ節)であった。一方,動注群再発2例は喉頭側断端での再発であり,深部,上方マージンの再発はなく原発巣再発が減少した。動注化学療法は原発巣再発の減少に寄与する有効な治療法となる可能性が示唆された。