抄録
茶抽出物(緑茶カテキン,GTEと略す)のがん予防への臨床応用に向けて研究が進んでいる。GTEには抗発癌活性(抗発癌プロモーション活性,がん細胞増殖抑制,アポトーシスの誘導),抗変異原性(抗イニシエーション活性,抗癌剤とDNAアダククト形成抑制),血管新生阻害など多様な生物活性があることが基礎的研究で証明されている。今回,我々はGTEを口腔白板症に塗布剤として局所投与し,その有効性ならびに病理組織学的変化を検討したので報告する。
対象ならびに方法:2005年8月から2006年2月までに当科を受診し,生検で口腔白板症と診断され本研究に同意を得た患者10名である。投与薬剤は1%GTEを口腔軟膏基材に添加/練合した軟膏で,患部に1回量0.5gを1日4回塗布し,60日間以上投与した。肉眼的観察,投与前・中・後で血清中カテキン濃度,投与前・後の標本でH-E染色ならびにKi-67免疫組織化学的染色を行い,組織学的効果とKi-67陽性細胞率を比較検討した。
結果:肉眼的に6例で消失・縮小・白板の菲薄化が認められた。有効例は投与後,病理組織学的に粘膜の正常化を呈し,Ki-67免疫組織化学染色で上皮の細胞増殖動態の正常化が示唆された。投与中ならびに投与終了後に臨床症状ならびに血液検査で副作用は認めなかった。これらより,口腔白板症に対するGTEの局所投与の有効性が期待された。