頭頸部癌
Online ISSN : 1881-8382
Print ISSN : 1349-5747
ISSN-L : 1349-5747
33 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
口腔
  • 八木原 一博, 岡部 貞夫, 出雲 俊之, 柳下 寿郎
    2007 年 33 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    下顎骨中心性癌,とくに下顎骨の腺様嚢胞癌はまれな癌腫である。今回,われわれは舌の神経麻痺を伴った下顎骨中心性腺様嚢胞癌の1例を経験した。
    患者は52歳,女性で舌の麻痺と下顎歯肉部に小さなポリープを発症した。他院にて病理組織学的にポリープは腺癌と診断され,加療目的に当科へ紹介された。口腔粘膜はほぼ健常であったが,X線所見で下顎歯槽部に多胞性透過像がみられた。また,上頸部リンパ節は腫脹していた。腺癌の病理診断から全身検索したところ,腫瘍は口腔内と頸部のみに確認され,原発巣と診断した。臨床診断は舌神経への進展と多発リンパ節転移を伴う左下顎骨中心性腺癌であった。左頸部根本的全郭清術,左下顎骨辺縁切除術が施行された。手術時,腫瘍は下顎骨歯槽骨部および下顎神経本管~下歯槽神経,舌神経におよんでいた。病理組織学的診断は下顎骨腺様嚢胞癌,左頸部多発リンパ節転移(pN;53/89)であった。
  • ―頸部リンパ節転移の検討―
    山本 憲幸, 藤内 祝, 光藤 健司, 西口 浩明, 斉藤 昌樹, 中島 英行, 杉村 友隆, 古江 浩樹, 福井 敬文, 上田 実
    2007 年 33 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,栄養血管が顔面動脈であり,かつ頸部リンパ節転移が認められた口腔癌症例17例に対し,術前治療として浅側頭動脈よりの新しい超選択的動注法(HFT法)を用いた化学放射線療法を施行し効果を検討した。動注化学療法はDOC:60mg/m2(15mg/m2/week),CDDP:100mg/m2(5mg/m2/day)を4週間で行い外照射は40Gy(2Gy/day)を4週間で行った。術前治療終了後約4週間の休薬期間の後,腫瘍切除術および頸部郭清術を行った。摘出した頸部リンパ節は病理組織学的にレベルI,IIはすべてGrade III以上の効果を得た。顔面動脈を栄養血管とする頸部リンパ節への転移に対する超選択的動注化学放射線療法は抗腫瘍効果が高い治療法であり,その有用性が示唆された。
  • 片倉 朗, 右田 雅士, 与謝野 明, 野村 武史, 山内 智博, 神尾 崇, 笠原 清弘, 柴原 孝彦, 松坂 賢一, 井上 勝一, 提坂 ...
    2007 年 33 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    茶抽出物(緑茶カテキン,GTEと略す)のがん予防への臨床応用に向けて研究が進んでいる。GTEには抗発癌活性(抗発癌プロモーション活性,がん細胞増殖抑制,アポトーシスの誘導),抗変異原性(抗イニシエーション活性,抗癌剤とDNAアダククト形成抑制),血管新生阻害など多様な生物活性があることが基礎的研究で証明されている。今回,我々はGTEを口腔白板症に塗布剤として局所投与し,その有効性ならびに病理組織学的変化を検討したので報告する。
    対象ならびに方法:2005年8月から2006年2月までに当科を受診し,生検で口腔白板症と診断され本研究に同意を得た患者10名である。投与薬剤は1%GTEを口腔軟膏基材に添加/練合した軟膏で,患部に1回量0.5gを1日4回塗布し,60日間以上投与した。肉眼的観察,投与前・中・後で血清中カテキン濃度,投与前・後の標本でH-E染色ならびにKi-67免疫組織化学的染色を行い,組織学的効果とKi-67陽性細胞率を比較検討した。
    結果:肉眼的に6例で消失・縮小・白板の菲薄化が認められた。有効例は投与後,病理組織学的に粘膜の正常化を呈し,Ki-67免疫組織化学染色で上皮の細胞増殖動態の正常化が示唆された。投与中ならびに投与終了後に臨床症状ならびに血液検査で副作用は認めなかった。これらより,口腔白板症に対するGTEの局所投与の有効性が期待された。
下咽頭
  • ―胃管,延長胃管,遊離空腸+胃管の比較―
    中溝 宗永, 横島 一彦, 粉川 隆行, 島田 健一, 酒主 敦子, 斉藤 明彦, 稲井 俊太, 八木 聰明, 牧野 浩司, 野村 務, 宮 ...
    2007 年 33 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭食道全摘出後の再建は頭頸部外科医にとって難手術の一つである。その異なる3再建術式の利点・欠点を明らかにするため,出血量・手術時間,合併症,術後機能を比較した。対象は54~72歳男性,下咽頭癌・頸胸境界部食道癌17例で,術式は胃管(n=5),延長胃管(n=7),遊離空腸+胃管(n=5)であった。各術式で出血量・手術時間に差はなく,胃管で部分壊死,空腸+胃管で小瘻孔が各1例に生じたが,延長胃管では切除関連合併症が多かったものの,縫合不全はなかった。摂食内容に差はなく,食道発声は延長胃管と空腸+胃管の各1例で可能になった。この結果から3術式に顕著な差はないが,全身・社会的要因に基づき術式を選択すると良いと考えた。
  • 岡村 純, 峯田 周幸, 佐々木 豊, 細川 誠二, 大和谷 崇, 森田 祥, 山元 理恵子, 神谷 欣志
    2007 年 33 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    遊離回盲部移植による音声再建は簡便な術式であり回盲弁による新声門により安定した代用音声が得られ誤嚥も少ない。2003年7月から2005年8月までに当科で咽喉食摘後に回盲部移植による音声再建を行なった症例のうち,追跡可能の13例において実際の発声状況につき検討した。13例中12例(92.3%)がシャントの開通を得られていたが,1例は2年後にシャントの狭窄にて発声不能となり,3例が患者本人の手技的問題で会話不能であった。会話可能症例が8例(61.6%)であったが日常生活で発声を使用している症例は4例(30.8%)であった。術後実際に会話を使用している症例は限られており,今後は一律に音声再建をするのではなく患者の社会的身体的状況,発声に対する意欲,音声再建に対する理解度を術前から正確に把握し症例を選択する必要があると思われた。
  • 田中 信三, 安里 亮, 永田 靖, 平野 滋, 田村 芳寛, 本多 啓吾, 伊藤 壽一, 平岡 眞寛
    2007 年 33 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭進行癌の基本的治療戦略として広範切除と再発リスクに応じた術後治療を採用した最近5年間の治療例39例(現治療群)の治療成績を調べ,それ以前に広範切除と一律的な術後照射を基本的に行った治療例25例(前治療群)と比較して術後治療の意義を検討した。両群とも,すべて扁平上皮癌で病期や原発部位に大きな違いはなく,術後治療不能例や喉頭保存治療例を同程度の割合で含んでいた。疾患特異的3年生存率は,現治療群で77%,前治療群では55%であった。現治療群では原発巣死が1例,頸部リンパ節転移死が2例と良好に局所が制御され,前治療群に比べて頸部リンパ節転移死が減少した。コンピュータシミュレーションによる的確な術後照射と高再発リスク例に対する追加照射・抗癌剤併用で局所制御が改善し予後の向上が期待できることが示唆された。
  • 塩野 理, 石戸谷 淳一, 河野 敏朗, 高橋 優宏, 遠藤 亮, 小松 正規, 渡辺 牧子, 三嶽 大貴, 佃 守
    2007 年 33 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌T3,T4症例に対し当科で施行している化学放射線同時併用療法の治療効果を検討した。合併症のない症例に対し,放射線治療は61.2~72Gy,化学療法はドセタキセル(DOC),シスプラチン(CDDP),5-FUの3剤(TPF療法)またはCDDP,5-FU,メソトレキセート(MTX),ロイコボリン(LV)の4剤(CFML療法)を用いた。24症例が対象となり, T3:8例,T4:16例,N0:1例,N2b:9例,N2c:10例,N3:4例であった。一次治療後,原発巣でのCR率はT3で75%,T4で56%,頸部リンパ節でのCR率はN2bで33%,N2cで20%,N3で25%であった。生存率はT3とT4との間に有意差を認めたが,N分類では有意差を認めなかった。進行期であるT3,T4症例ではほとんどが複数のリンパ節転移を有するため,原発巣の進展範囲によって治療効果に有意差を生じたものと考察された。
  • 宇野 雅子, 秋定 健, 粟飯原 輝人, 西池 季隆, 森田 倫正, 原田 保, 業天 真之, 今井 茂樹
    2007 年 33 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌ステージIII,IV症例において,ドセタキセル(TXT)を用いて行った超選択的動注化学療法について臨床的検討を行った。対象は22例で,男性21例,女性1例であった。年齢の中央値は64歳(42-83歳)であった。亜部位は梨状陥凹が19例。咽頭後壁2例,咽頭食道接合部(輪状後部)が1例であった。第1日目にSeldinger法でTXT 40mg/m2の動注をし,第2日目にCDDP 50mg/m2を,第2から6日目まで5-FU 350mg/m2を持続点滴静注し,同時に放射線治療を行った。一次治療後の効果は原発巣に対してはCR率95.5%,奏効率100%と高く,頸部転移巣に対してはCR率28.6%,奏効率76.2%であった。有害事象については,Grade 3の粘膜炎を40.9%に認め,Grade 3以上の白血球減少を45.5%に認めたが,治療を中止するような重篤なものは認めなかった。4年生存率は79.3%で,喉頭温存率は100%であった。
化学療法・合併症治療など
  • 本間 明宏, 古田 康, 鈴木 章之, 浅野 剛, 古沢 純, 折舘 伸彦, 畠山 博充, 永橋 立望, 鈴木 恵士郎, 西岡 健, 白土 ...
    2007 年 33 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:原発巣に対して超選択的動注+照射の同時併用療法(以下RADPLAT)を行った症例のうちリンパ節転移(以下LN)陽性で頸部を1年以上観察できた23例についてLNの治療結果・成績について検討した。
    対象:症例は鼻副鼻腔4例,中咽頭5例,下咽頭13例,耳下腺1例,N分類はN1:2例,N2b:10例,N2c:8例,N3:3例であった。
    方法:動注はSeldinger法によりシスプラチン100~120mg/m2を主に原発巣に投与するが,LNの栄養血管が容易に同定された場合にはLNへも動注を行った。治療後LNの残存があった場合には頸部郭清を行うという方針で経過観察を行った。
    結果:LNは17例(73.9%)がRADPLATで制御されている。残存・再発した6例のうち3例は頸部郭清にて制御された。
    結語:LNに対してもRADPLATは有効であると考えられたが,N2-3でも29%は残存・再発したため,積極的に頸部郭清を行うのか,その場合の郭清範囲をどうするか,あるいは“watch-and-see”で慎重に見極めるようにするのが良いのかを今後明らかにしていく必要がある。
  • ―Tumor Dormancy Therapyの可能性について―
    大上 研二, 濱野 巨秀, 竹尾 輝久, 関根 基樹, 和田 涼子, 飯田 政弘
    2007 年 33 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    入院治療を望まない高齢者頭頸部癌患者に対して,初回治療として外来TS-1単剤治療をおこない,投与方法と有害事象,治療効果について検討した。
    対象と方法:65歳以上の前治療のない頭頸部扁平上皮癌患者8例(平均73.8歳),ほとんどがステージIVAであった。病状を十分に説明の上,患者,家族の希望により本治療を選択した場合のみを対象とした。投与量は体表面積あたりの推奨投与量の67%から100%まで,投与方法は4週投与2週休薬から2週投与2週休薬まで,それぞれ症例に応じて変更した。投与期間は1ヶ月から2年(現在継続投与中を含む)までである。
    結果:治療効果はCR 1例,PR2例,SD2例,PD3例であった(奏効率38%)。生存期間は4ヶ月から2年。Grade 4以上の白血球減少,Hb低下を1例,Grade 3の食欲不振を2例に認めた。3例はQOLを維持して1年以上の在宅療養ができた。67-80%の低用量の抗癌剤でPRやSDを維持した症例もあり,高齢者に対する治療としてはTumor Dormancy Therapyとしての長期投与も有用と考えた。
  • 秦 浩信, 大田 洋二郎, 上野 尚雄, 栗原 絹枝, 西村 哲夫, 小野澤 祐輔, 全田 貞幹
    2007 年 33 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    我々は静岡県立静岡がんセンターにおいて,3年間に頭頸部領域で放射線単独療法あるいは化学放射線療法を受けた患者249例を対象に,治療中に生じた口内炎について後ろ向きの調査を行った。口腔が照射域に含まれないものをA群(73例)に,口腔内照射線量が40Gy未満のものをB群(66例)に,口腔内照射線量が40Gy以上のものをC群(110例)に分類した。C群で化学放射線療法群(62例)は放射線単独療法群(48例)に比べGr.2以上の口内炎が生じるリスクは5.6倍 (OR 5.6;95% CI:2.1-14.9)であったが,B群では有意差が認められなかった。さらにC群の中で化学療法併用群に限ると,5-FU使用群(50例)は,非使用群(12例)に比べGr.2以上の口内炎が生じるリスクは17.1倍になった(OR 17.1;95% CI:2.8-106.0)。以上の結果から口腔内照射線量が40Gyを越える場合に,5-FUは口内炎増悪の重要なリスク因子となることが明らかになった。
  • 栗原 絹枝, 西村 哲夫, 全田 貞幹, 大田 洋二郎, 秦 浩信
    2007 年 33 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2007/07/10
    ジャーナル フリー
    Radiation recall現象(RRP)は,放射線治療後の薬剤投与により照射野に一致した炎症反応が誘発される現象と定義される。今回我々はPaclitaxelにより誘発されたRRPの一例を経験したので報告する。症例は64歳男性。篩骨洞癌(T4bN0)の診断の下,FP療法(5-FU 400mg/m2,CDDP 80mg/m2)および放射線療法(70Gy)を行ったが,臨床的にPRのためweekly TXL(Paclitaxel 100mg/m2/week,wTXL)を追加した。wTXL 1コース43日目,口腔粘膜にRRPが出現し疼痛治療と感染予防中心に処置を行ったところ,約7日で軽快した。その後,wTXL2コース目を同量で投与しRRP再発を認めたが,前回同様約7日で軽快した。放射線治療後の化学療法において,RRPの早期診断・処置により治療継続は可能であることが示唆された。
feedback
Top