抄録
遊離回盲部移植による音声再建は簡便な術式であり回盲弁による新声門により安定した代用音声が得られ誤嚥も少ない。2003年7月から2005年8月までに当科で咽喉食摘後に回盲部移植による音声再建を行なった症例のうち,追跡可能の13例において実際の発声状況につき検討した。13例中12例(92.3%)がシャントの開通を得られていたが,1例は2年後にシャントの狭窄にて発声不能となり,3例が患者本人の手技的問題で会話不能であった。会話可能症例が8例(61.6%)であったが日常生活で発声を使用している症例は4例(30.8%)であった。術後実際に会話を使用している症例は限られており,今後は一律に音声再建をするのではなく患者の社会的身体的状況,発声に対する意欲,音声再建に対する理解度を術前から正確に把握し症例を選択する必要があると思われた。