抄録
下咽頭癌ステージIII,IV症例において,ドセタキセル(TXT)を用いて行った超選択的動注化学療法について臨床的検討を行った。対象は22例で,男性21例,女性1例であった。年齢の中央値は64歳(42-83歳)であった。亜部位は梨状陥凹が19例。咽頭後壁2例,咽頭食道接合部(輪状後部)が1例であった。第1日目にSeldinger法でTXT 40mg/m2の動注をし,第2日目にCDDP 50mg/m2を,第2から6日目まで5-FU 350mg/m2を持続点滴静注し,同時に放射線治療を行った。一次治療後の効果は原発巣に対してはCR率95.5%,奏効率100%と高く,頸部転移巣に対してはCR率28.6%,奏効率76.2%であった。有害事象については,Grade 3の粘膜炎を40.9%に認め,Grade 3以上の白血球減少を45.5%に認めたが,治療を中止するような重篤なものは認めなかった。4年生存率は79.3%で,喉頭温存率は100%であった。